難関化する公立中高一貫校、検証へ 文科省
2009年5月11日 朝日新聞より
全国に広がる公立の中高一貫校をめぐり、文部科学省は入学選抜のあり方などについて今月にも議論を始めることを決めた。「難関化して小学校の勉強では合格できないところがあり、公教育として問題だ」との批判を受けたものだ。文科省は現状をくわしく検証する考えだが、保護者には「私立のように学費をかけないで大学進学に期待がもてる」と受験熱が高い。見直し論議は広く関心を呼びそうだ。
公立の中高一貫校は99年施行の改正学校教育法で認められ、08年4月時点で158校ある。当初は、6年間でゆとりをもって教育し、生徒の個性を伸ばすための制度とされた。法改正の際、国会は「偏差値による学校間格差を助長させない」と付帯決議し、施行規則でも「学力検査を行わない」と念押しして定めた経緯がある。
しかし、状況は一変している。大学進学実績が高い高校が併設した中学などで競争率は跳ね上がり、学校側は「適性検査」と呼ぶ長文の問題を出題。私立のように難しい計算を解くような問題ではないものの、文章や図表などを読み解く高い考察力を求め、私立入試並みの対策が必要なところが多くなっている。小学校などの現場には「私立に対抗して成績がよい子どもを早く確保しようとしている」という指摘が上がっている。
県立千葉高校(千葉市)に昨春併設された千葉中学は、初年度は約27倍、今春も約17倍と高い競争率になった。地元の塾は専門の対策講座を設けたり、出題内容を分析した模試を実施したりしている。京都府の伝統校、府立洛北高校の付属中学も6倍を超えている。
文科省が議論を始めるきっかけになったのは、規制改革会議(議長=草刈隆郎・日本郵船前会長)の動きだ。「私立への『民業圧迫』にならないか」といった観点から公立一貫校の問題を議論。昨年末、「塾通いなどが必要で、高額所得者が有利になる」「公立が担うべき役割を明確化するべきだ」と批判する答申をまとめた。答申は「抜本的な改善」を求め、▽地域の「トップ校」の高校には中学を設けない▽面接、作文、推薦などを適切に組み合わせる▽志願者が3倍程度を超えたら、選抜の過程で必ず抽選を採り入れる――といった方法を提案している。
これを受け、文科省は今月にも中央教育審議会で議論を始める考えだ。各校が実施している「適性検査」はどうあるべきか、中高6年間の教育内容と目標・理念をどうとらえ、どう進めていくべきか――について関係者にヒアリングし、検証を進める。
文科省の教育制度改革室は「競争が過熱気味な一方で、保護者のニーズが高いのも事実。こうした状況をどう考えるべきか、難しい問題をはらんでいる。いずれにせよ、制度開始から10年がたち、公立の一貫校の意味、教育内容と成果もあわせて検証する時期に来ている」としている。(宮本茂頼、上野創)
2009年5月11日 朝日新聞