公立中高一貫校(中) 中学で高校教科書、海外研修…
2008年2月2日 中日新聞
公立中高一貫校の最大の特徴は六年間の一貫教育だ。独自カリキュラムなど特徴づくりに励む都立小石川中等教育学校と千代田区立九段中等教育学校などの取り組みを例に、一貫教育のメリットを考えた。 (井上圭子)
「おぉー、泡だ」
研究者さながらの白衣に身を包んだ二年生が、試験管の中を見つめる。東京都文京区にある都立小石川中等教育学校の生物室。通常の中学では六人で使う実験器具を、同校の生徒は二人で使う。「母体校の都立小石川高校が昨年度『スーパーサイエンスハイスクール(理数系教育重点校)』に指定された恩恵」と栗原卯田子校長は胸を張る。
校舎は中高共有のため理科専用教室は地学室、物理室など四つある。「学習のダブりを防ぎ、生徒を長い視野で見られる。六年間通して科学的、論理的に考え論じる力をつけたい」(栗原校長)
中高一貫最大の特徴は高校受験がないこと。受験準備が必要ない上、文部科学省は学習指導要領の順序や進度を組み替えて教えることも、高校の教科書を副読本として中学段階で使うことも、中高一貫校には発展的学習として特例的に認めている。
小石川校では、早くも二年生が中学段階の学習内容を終えそうな進度だという。開設準備から携わってきた柴田伊知郎副校長は「一期生を見て、環境が人を育てることを実感している」と感慨深げに語る。
同校では、通常の公立中学生が高校受験に集中する三年の夏休みに、全員が二週間の海外研修旅行に出かける。「六年間途切れなく安心して学べるので、生徒は関心分野を深められ、教員は多感な時期の生徒とじっくり向き合える」と栗原校長は話す。
一方、千代田区立九段中等教育学校では、外国人とも積極的に交流できるコミュニケーション能力を高めるため、六年間を通して各種の英語特訓メニューをそろえる。
毎朝授業前の二十分間、生の英語を浴びるように聞く「イングリッシュシャワー」がある。講師にフィリピン、カンボジア、ヨルダンなどアジアの留学生を招く。英語科の松尾聡美教諭は「生徒の視野を広めたくて、あえて英語が母語でない人を選んだ。コミュニケーション体験を通して英語の学習意欲が高まれば」と話す。
年一回の英検とGTEC(英語コミュニケーション能力テスト)に全員が挑戦し、学年ごとに海外ホームステイや国内英語合宿などの研修も設定されている。
公立中高一貫校は都内どこからでも受検できるためライバル校が多く、特徴づくりにも躍起だ。都立白〓高校付属中学校(台東区)は囲碁将棋や邦楽、日舞などの“一芸”生徒枠を持ち、日本の伝統文化理解に力を入れる。四月開校する都立武蔵高校付属中学校(武蔵野市)は理科に重点を置き「地球学」を教える。
学習面以外にも一貫校側が魅力に挙げるのが部活動での人間関係だ。中高一緒に活動する学校は多く、小石川校の栗原校長は「中学生は高校レベルの高さに刺激を受け、高校生は下級生への思いやりなど大人の部分を伸ばしている」と指摘する。
中高一貫教育は私立に実績があるが、公立中高一貫専門塾「進学塾ヒューマン」の鉢木真一・首都圏ブロックアシスタントマネジャーは、公立の良さに「層の広さ」「小学校生活の充実」を挙げる。
「私立は宗教など独自のバックボーンがあり、家庭環境も似通いがちだが、公立は多様な人と触れ合える。また、受検には小学校の成績表や態度などを記した報告書が必要なので、小学校生活をないがしろにできない。逆に言えば、小学校でやることをきっちりやれば自信を持って臨める」
ただ、こうした魅力づくりの取り組みは始まったばかりで、まだ「実績」になったわけではない。その上、一貫教育ゆえの課題もある。
※〓は區に鳥
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2008020202084365.html