公立中高一貫校(上) 膨らむ期待、『受検』過熱
2008年1月29日 中日新聞
公立中高一貫校の人気が沸騰している。今春、首都圏で行われている適性検査(入試)の応募倍率は最高二十七倍。軒並み五-十五倍の“狭き門”だ。だが、新設校ばかりで実力は未知数。公立一貫教育の現場をのぞいてみた。 (井上圭子)
「あった!」
二十三日、千葉市中央区の小高い丘の上にある県立千葉高校。冷たい雨の中、不安げに掲示板を見つめていた受験生の目から思わず涙がこぼれた。同高校に新設された県立千葉中学校は二十七倍の難関。母体の県立千葉高は、昨年二十三人が東大に合格した県内公立トップの進学校だ。そこに全員が無試験で入れるとあって、定員八十人に二千百四十二人が殺到した。
合格した石井七海さん(12)は「高校生とも触れ合って楽しく過ごしたい。一期生として新しい歴史を築きたい」と声を弾ませ、母の光枝さん(49)も「モルモット的な不安はあるが、母体が千葉高なら間違いない」と期待を寄せる。
同中学開設準備委員会の富谷利光教諭は「全県内から予想以上に優秀な児童が集まった。成果が未知数の学校がこれだけ注目を浴びるのは、母体校の実績と信頼の証し。期待を裏切らぬよう、世界で活躍する心豊かな次代のリーダーを育てたい」と意気込む。
保護者ニーズの多様化と、私立中高一貫校が公立を追い抜き進学実績を着々と上げていく実情を背景に、文部科学省が公立中高一貫校を制度化したのは一九九九年四月。一つの学校として六年間一体的に中高一貫教育を行う「中等教育学校(1)」、同一の設置者による中学と高校を接続する「併設型(2)」、異なる設置者による中学と高校が教員・生徒間交流を深める「連携型(3)」の三タイプあり、(1)(2)では、高校での指導内容を中学段階で前倒しして教えることもできる。
九九年度当時は全国で三校のみだったが、その後次々と増え、二〇〇七年度までに百四十九校が開校した。同省は「高校の通学範囲に少なくとも一校(全国で五百校)整備する」との目標を示しており、〇八年度以降も少なくとも二十一校が開校する予定だ。特に首都圏は、〇三年度に開校した埼玉県立伊奈学園中学を皮切りに、開校ラッシュとなった。いずれも今年の募集は高倍率だ。
文科省は「受験戦争の低年齢化を助長する」として、各校は教科の内容を問うような学力試験ではなく、発想力や着眼力をみるような記述式の「適性検査」として実施している。このため「受検」と呼ぶが、実際は受験が過熱している。
公立中高一貫校の専門塾も出現した。昨年三月に開設した「進学塾ヒューマン」の鉢木正継塾長は「私立中学受験では実績ある大手塾に勝てない。新興のわれわれにとって公立中高一貫校はビジネスチャンス」と話す。
「授業料は私立なら六年間で四百万円以上かかるが、公立なら百万円台で済む。一貫校は公立の起死回生の切り札。どこの一貫校も生徒をかなり鍛えている。間違いなく実績を出してくるだろう」と人気はさらに高まると予想する。
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2008012902083200.html