足立区に見る学校選択制 実態は「近く・友人・兄弟」
2007/05/16 産経新聞
1月の教育再生会議第1次報告で提唱された公立小中学校の選択制。都市部を中心に多くの自治体で採用されている。「子供に合った学校が選べるようになる」と評価される半面、地域の学校の意識が薄くなるなどのデメリットも指摘されている。東京都足立区の学校選択制について聞いてみた。(慶田久幸)
都市部中心に
教育再生会議の第1次報告では「『ゆとり教育』を見直し、学力を向上する」という取り組みの1つに「地域実情に留意のうえ学校選択制の導入など、子供にあった教育内容や教育方法を保護者が選べるようにし、子供の能力・適性、興味・関心、進路希望などに応じ、すべての子供がそれぞれに伸びるようにする」と推進している。選択制は学校が近くに接して建てられている都市部で導入される傾向にあり、小学校では埼玉県で18自治体(平成19年度)千葉県では9自治体(18年度)が実施している。
東京都では今年度、中学校で19区8市、小学校では14区6市で実施されている(一部重複。ブロック、隣接校のみ選択も含む)。
足立区では14年度から区立小中学校の選択制を導入、19年度の新入生は小学生で約2割、中学生で約3割が学区外の学校を選んでいる。
足立区教育委員会は「保護者から学校選択範囲が広がった、と評価されている」としている。
いじめや部活
同区では、16年度まで入学校を選択した理由を新入生の保護者にアンケートしてきた(複数回答)。小学生の1位は「学校が近く、通学しやすい」(75・1%)、2位は「兄、姉が通学している」(37・4%)、3位が「子供の友達が同じ学校へ行く」(36・0%)。中学もほぼ同じ理由で、現在でも大きな変化はないとみられる。
一方、区内の保護者らから、学区外の小学校を選ぶ理由としてこんなケースが聞こえてきた。
(1)幼稚園の時、友達関係がうまくいかず友達とは別の学校を選んだ(2)両親が共働きで、昼間預かってもらう祖父母の家がある学区の学校を選んだ(3)幼稚園時代の友人が多く行く学校を選んだ(4)学年に1クラスしかないため、クラス換えができる大規模な学校を選んだ-
さらに中学校では、希望する部活動がある、または部活動が盛んだとの理由も多い。
小学6年生を持つ父親は「子供の人間関係で選んでいる保護者が多い。主体的に選ぶほど学校に価値があるとは思えない」として、再生会議が掲げるような学校の教育内容や教育方法で保護者が選択することなど不可能だと厳しい見方を示した。
予算への不安
再生会議では地域全体で子供を育てることも提唱している。
だが、別の父親は自宅のある学区内の小中学校を卒業したが、「学校に他学区の子供が増え、地域の学校という意識が薄くなった」と話し、近所でもそうした声が上がっているという。
「兄弟が別の学校へ行ったため、授業参観が大変になった」「野球部が盛んなので選んだら顧問が異動してしまった」などの不満も出た。
さらに昨年末、区と東京都が行う学力テストの結果で、学校予算の一部を増減するとの方針を発表した。多くの抗議が寄せられ、点数の伸び率で配分すると方針転換した。だが、個人ではどうしようもない学校全体の成績で予算が変わることへの不安もあった。
保護者から「私立も都立の中高一貫校もある時代。このままでは、区立校を敬遠する子供がさらに増える」との指摘が出ていた。
対策について同区教委では「それぞれの学校が特色づくりに努力してほしい」と話している。